会計事務所 税理士事務所 長崎県 佐世保市

平成21年以後の証券税制(2008.07)

 平成20年度の税制改正はガソリン税をはじめとする期限切れ税制に注目が集まり、その他の改正はあまり注目されなかった感があります。しかしながら、証券税制も地味に改正されており、新たに確定申告が必要となることがありますので念のために確認しておきましょう。

改正の概要

(1)上場株式等の譲渡所得に対する改正

@平成21年1月1日以降の上場株式の譲渡については、上場株式等に係る譲渡所得に対する軽減税率(現行:所得税7%、住民税3%)が廃止され、税率が所得税15%、住民税5%で課税されることとなります。

 ただし、経過措置により、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの2年間(以下、経過期間という)については、上場株式等の譲渡所得等の金額のうち500万円以下の部分については現行と同じ税率(所得税7%、住民税3%)が適用されます。

A特定口座内保管上場株式等の譲渡等については、源泉徴収選択口座を選択していれば今ままでは確定申告をすることを要しませんでしたが、改正により、経過期間における各年の上場株式等に係る譲渡所得等の金額の合計額が500万円を超える場合には、確定申告が必要とされています。つまり、平成21年分と平成22年分の確定申告のみ譲渡所得等の金額が500万円超の場合の申告手続きが必要となるため、うっかり忘れることのないように留意しておきましょう。

(2)上場株式等の配当所得に対する改正

@上場株式等の配当等に対する源泉徴収税率についての軽減税率(現行:所得税7%、住民税3%)の特例が廃止され、税率が所得税15%、住民税5%で源泉徴収されることとなります。ただし、経過期間中は居住者の場合、個人の大口株主を除き現行の所得税7%、住民税3%が適用されます。また、上場株式の配当等については、現在は申告不要となっていますが、平成21年分と平成22年分については、1銘柄の年間配当金額が1万円超のものの合計額が年間100万円を超えるときには、確定申告を要することとされていますので、留意しましょう。

A平成21年1月1日以後に支払いを受ける上場株式等の配当については、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択することができるようになります。

 ただし、総合課税と申告分離課税は申告するすべての配当等に対していずれか一方を選択する必要があり、申告分離課税を選択した場合には、配当控除は適用されません。

(3)上場株式等に係る譲渡損失と上場株式等に係る配当所得との損益通算等の特例

 平成21年分以後の上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合や、その年の前年以前3年内に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額(前年以前に控除されたものを除きます)がある場合には、これらの譲渡損失の金額を、上場株式等に係る配当所得の金額(上記(2)Aで申告分離課税を選択したものに限ります)から控除することができることとされました。

 新しい制度ですので、適用漏れがないよう留意したいものです。